子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 かき氷がどんなものかは知っているが、ここまで氷が柔らかいとは思っていなかった。それともこの店がたまたまそうなのだろうか。

 氷というよりは、本当に雪のようだ。

 顔を寄せるとほんのり冷気を感じ、暑さで乾いた喉へ放り込むとおいしいですよ、と私を急き立てる。

 最初はまず、練乳のかかっていない抹茶シロップだけのところをすくい取った。

 想像した通りのふわっとした感触に胸を膨らませながら口に含む。

 氷が解けるのに合わせて、お茶の甘さと香りが舌に広がった。

 あっという間に液体に変わった氷は、そのままするすると喉に落ちていく。

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