子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 実家では家のものに触れてはいけないと言われていた。私が触ると汚れるからだそうだ。

 保名さんの身長に合わせた作りになっているのか、棚の取っ手が遠い。背伸びをして開けると、確かに中にはグラスや皿が入っていた。

 あいにく、背が足りないせいでどんなものが収納されているのかよく見えない。

 爪先が痛くなるほど背伸びをして皿を取り、パンを一枚乗せる。そのままレンジに入れてボタンを押すと、謎の達成感を覚えた。

「時間がかかってごめんなさい。できました」

「……それで? トーストだけで終わりか?」

 呆れたように言われてはっとする。パンだけの朝食というのは味気ない。

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