子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 身に覚えのない性交渉の結果がはっきりするまで、手を出さないという言葉を覚えている。

 私が彼に嫁いでからひと月。そろそろそうした話が出てもおかしくはない。

 でも、彼は私に話しかけようとしないし、顔も合わせたがらない。

 家族を困らせ、夫となる人を騙し、妹から婚約者を奪った女だと思われているのだから仕方のない話ではあるけれど。

 初めて出会った庭でも、どこかから侵入したのかと誤解され、大人になってからも誤解されるなんて。

 いっそ、『好き』の気持ちがなければこんな寂しさを抱えずに済んだのだろうか。

 だけど彼を諦めるには、これまで想いを温めてきた時間が長すぎた。

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