子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「この一か月、ここで過ごしてたんだろ。なんで救急箱の場所も知らない?」

「人の家を勝手に漁っちゃいけないと思ったんです……」

 うつむいて答えると、保名さんははっきりとわかりやすい溜息を吐いた。

「ちょっと待ってろ。血は洗い流しておけ」

「は、はい。グラスの片付けは……」

「後で俺がやるからなにもするな」

 不甲斐ない私に呆れたらしく、保名さんはリビングの方へ向かう。

 言われた通りに傷を再び洗っていると、彼は救急箱を手にして戻ってきた。

「まったく。なにもできないとは聞いてたが、ここまでだとは思わなかった」

「本当にごめんなさい……」

「いいから、手」

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