子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 促されて、再び彼に手を差し出す。

 私よりずっと大きな手が、水で冷えた手首を掴んだ。

 少しだけ荒っぽくて、でもどこか労わるような手つきに胸の奥で小さな音が鳴る。

「結構深くまで切ってるな。痛くないのか?」

「い……痛いです……」

「じゃあ、片付けなんかしてる場合じゃないだろ」

 保名さんは私の傷に白いタオルを押し当てて血を拭うと、救急箱から取り出した絆創膏を指に巻き付けた。

 ああ、と自分でも意図せず声が漏れる。

「絆創膏……二回目です」

「は? なにが」

「昔、うちに来た時にも絆創膏を付けてくれました。庭にいた私にこうやって」

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