子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 懐かしくて切ない。でも、あの時と同じように扱われたからこそ、自分が保名さんをまだどうしようもなく好きだと気付かされてしまった。

「痛いの痛いの飛んでけって言ってくれたんです。もう痛くなくて済むように。……うれしかった」

 保名さんが丁寧に巻き付けてくれた絆創膏は、あの時と違って茶色いだけの普通のものだ。青い恐竜の絵は描かれていないし、くしゃくしゃにもなっていない。

 彼の気持ちがうれしいのは、今も同じだった。

 きれいに巻かれた絆創膏を見て、ふっと笑みがこぼれる。

「……そんな顔で笑うんだな」

 保名さんが驚いたように目を丸くして言う。

 言われてから自分の顔を手で押さえた。
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