バスストップ
期末テスト
期末テストの日程はメイと同じだった。
その間、なぜか彼女と往復の通学時間も合わなくて「好きだ」なんて伝えたから避けられてるのかと思っている。

メイのテストがどうこうっていうより、俺の成績が落ちそうだ。
これで成績が落ちたら慰謝料を請求したい。

最終日の最後の科目が終わって、帰る準備をしていると、後ろの席のやつからテストの内容について話しかけられた。
どこどこの何々の問題の答えはあれであってたのかとか、相手の質問を聞きながらスマホを見ると通知がきている。

“一緒に帰ろ”




メイだ

もはやクラスメイトに話しかけられている最中だということも頭から吹っ飛んだ。

超高速で返信する。
メイからのメッセージは30分以上も前だ。

“今終わったけど、メイどこ?”
と入れると秒で既読になる。
“レイタの学校の方に向かってる”

その文面を見るや否や、俺は机の上に出していたものをまるごとガサッとかばんの中に落とし入れると大きな音を立てて立ち上がった。

「千代くん?」と声をかけられて(あ!)と会話が途中なことを思い出したが、「ごめん、急いでて…」と最後まで言い切る前に教室から体を半分出していた。

メイが俺の学校に?
そこまでして俺に言いたいことが??
階段を降りながら心拍数が上がっていく。
『頭良くならなかったからレイタ嫌い』とか言われたらどうしよう。
『ミツルくんと付き合うことにしたからレイタ死んで」とか言われたらどうしよう。
ポロシャツの胸のボタンのあたりがギューっとした。
『レイタとチューとか罰ゲームじゃん。汚い、不潔、臭い』とか言われたら。
いやなんだけど。

俺、なんで「好き」とか言っちゃったんだろう。
と半分後悔しながら、半分メイが学校に来てくれることにドキドキしながら、校門へと急ぐ。

校門へ近づくと、周りの男たちが何かを珍しそうに見ている感じがする。
メイかも知れない!

…もしメイがミツルと一緒にいて俺のこと笑ってたらどうしよう。

自分がこんな思考回路のうるさい奴だと思わなかった、思春期こじらせたみたいな心境がダラダラにダダ漏れて自分でも引く。
舌打ち女にフラれたところで痛くもかゆくもねえ!
そうだ、フラれたら年上のインテリお姉さんを探す旅に出よう。
そんでめっちゃ大人なお付き合いを教えてもらって、舌打ちメイに「クソガキが」って言ってやる。
そうだ、そうしよう。

そもそも元から俺は舌打ちする女なんて嫌いなんだから。

校門を出て、他の男たちの視線の先にやはりメイが立っていた。
暑いのか、白シャツの胸元を持ってパタパタと扇いでる。
急いできた事がバレないように、ゆっくりと大きく腹式呼吸。
平静を装ってメイの方へと向かう。
メイは自分の胸元を覗き込んでいた視線を上げるとこちらに気づき、少し目を大きくして大股で歩いてきた。

ふりたかったら、ふりやがれ!

とこちらも喧嘩腰で行くと、勢いよくメイの両手が伸びてきてポロシャツの胸ぐらをがっしりと引き寄せられた。

こわ………っっ!!

一瞬何が起きたのか分からなかった。
気づいた時には超至近距離なメイの目が見えて、直後にメイの顔が離れていく。

そして離れたと思ったら俺の胸にメ イが顔を押し付けた。
その態勢のまま俺の背中に手をまわして締め付けてくる。

は?何なにナニ今の。なにーーーー!

チューした?
さっきこいつ、俺にチューしたぁ????

ほっぺになんか、熱が残ってる。
何かが触れた余韻がある。

俺のポロシャツに顔をくっつけてくぐもった声で
「テストめっちゃできた〜。レイタのおかげ〜。」
とふがふが言っている。

え、何ナニなに、俺今、抱きしめられてる???
こ、これ何???

メイは俺を見上げて、いつもと同じ素の表情と声で言った。
「ご褒美の件、レイタのこと好きだから問題なし。」
え〜、言い方かわいくない、けど、好き〜

メイは俺から離れて「よしっ」と髪を整えた。俺に顔をこすりつけたせいで、長い前髪がちょっとボサボサしている。
「一緒に帰ろう。」
と、彼女は俺のカバンを引っ張った。
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