追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
「たとえルルの加護のおかげだって言っても『味覚魔法』も使えるし、『触覚魔法(ティッチ)』や『聴覚魔法(スオンド)』だってつかえるじゃない。特にあの『すごい力』を持った触覚魔法は恐ろしい魔獣を簡単に──」

 と、そこまで言って、クロエはぎゅっと言葉を喉奥に押し戻してしまった。

「……ちょっと。なんでそこで黙るのよ」

 プリシラが、訝しげな視線をクロエ投げつける。

 中途半端なフォローなんていらない。そんな言葉をぶつけようかと思っていたプリシラだったが、クロエの表情を見て流石に違和感を覚えた。 

「な、何よ? どうしたの?」

「プリシラちゃん、あれ……」

「あれ?」

 クロエが指差す先を見たプリシラの目に奇妙な生き物の姿が映った。

 鶏といえばわかりやすいだろうが、普通の鶏とは大きく違っている。ゆうに二メートルはある巨大な体躯に、蛇のような尻尾を持っているのだ。

「……バジリスク?」

 雄鶏の体に蛇の尻尾を持つ、魔獣バジリスク。

 バジリスクの危険性はプリシラもよく知っている。人の腕ほどある鉤爪に流れる強力な神経毒は、かすり傷でも人間を死に至らしめることができる。
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