追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください

 さらに、その気性の荒さは魔獣の中でも群を抜いている。かつての獣人戦争で、一匹のバジリスクよって百戦錬磨の騎士団が壊滅してしまったという逸話が残っているほどなのだ。

 しかし、とプリシラはバジリスクを見て思う。

 バジリスクが住処としているのはもっと北の土地だったはず。少なくとも今いる「ラインド王国」の「ヘッセン伯爵領」で目撃情報は聞いたことがない。

 ──と、そんなことを考えていたとき、静まり返った森の中に甲高い鳥の鳴き声が響き渡った。金属が擦れ合うような不快な音。バジリスクが威嚇するときに放つ鳴き声だ。

「きゃああっ!」

 バジリスクの鳴き声に呼応するように跳ねたのは女性の声。

「……おいおいおい、まずいぜ見ろ! バジリスクの向こうに女がいる!」

 クロエの肩の上で器用に手を目の上にかざしながらルルが叫んだ。

 バジリスクの影になっていて気づかなかったが、確かに女性の姿があった。

 シフトと呼ばれる四つの布を縫い合わせた上着に栗毛の三つ編みという見た目は、女性というより「少女」という呼び方が似合いそうな雰囲気がある。

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