追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
「村の人間以外には売れないって、何かあったんですか?」

 そう訊ねたのはクロエだった。店主はため息を添えて答える。

「ブリタニカが魔王軍の侵攻を受けたらしくてな。その一報を受けてオハラ様が北の街道を封鎖したんだ。おかげで商人たちが動けず、物資が滞ってるんだ」 

 オハラ様というのは、今プリシラたちがいるヘッセン伯爵領を治めている領主のオハラ・ヘッセン伯爵のことだ。

 ヘッセン伯爵領は、大陸有数の大国ラインド王国の一部……いわゆる「領邦」にあたる。

 王国の北に位置するブリタニカ公国。

 東のウィーゼンハルゲン辺境伯領。

 西のヘッセン伯爵領。

 そして、南のヘムルト侯国とラインド王国直轄領。

 それら五つの領邦を五人の貴族が治めているのがラインド王国なのだ。

 クロエが顎に指を当てて唸るように言う。

「近々オハラ様が軍を動かすという噂は耳にしてましたが、街道を封鎖ですか……」

「相当慌てていらっしゃるらしい。北の国境付近で魔王軍とブリタニカ軍の小競り合いは起きていたが、越境して攻めてきたのは初めてだからな」  

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