追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
 カウンターの向こうでジョッキを磨いている店主らしき男が声をかけてきた。歳は三〇代といったところだろうか。短くかられた頭髪に立派な髭を蓄えた少し強面の男だ。 

「こんにちは。これからブリタニカに行くんだけど、旅の準備をしたくて」 

「旅の準備?」 

 店主が胡乱な目でプリシラを見る。

 いかにも旅慣れしていなさそうな若い男女に猫(のような精霊)が一匹。怪しまれても仕方がない顔ぶれだ。特にプリシラは明らかにこれから旅をするような格好ではない。

 店主はプリシラを品定めるようにじっと見たあと、ポツリと言った。

「生憎、今はオレガノの人間以外に物は売ってないんだ」

「……? オレガノ?」

「この村の名前だよ。森でハーブのオレガノがよく採れるから、そう呼ばれている」

 そういえば、今朝サロの付け合わせを探しているときにオレガノを見つけた。珍しいと思っていたけれど、特産品だったのだろうか。

 しかし、と店主を見てプリシラは思う。

 村の人間以外にものを売っていないとはどういうことだろう。遠回しに「素人旅人に売る物はない」と追い返しているのだろうか。 

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