白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「っ!」

 ひかりの洪水がおさまり、ウィルバーが瞳をひらいたときには、すべてが終わっているように見えた。シュウシュウという異様な音さえ聞こえなければ。

「怪盗、アプリコット・ムーン……?」

 西の塔の小部屋にいるのは、ウィルバーと、タイタスと、怪盗アプリコット・ムーンの三人のはず。
 だが、ウィルバーがそこで見たのは……
 タイタスが持っていた薬を浴びて気を失い床に突っ伏している怪盗アプリコット・ムーンと。
 さきほどまでタイタスが着ていたスカートのなかですやすやと眠っている見知らぬ赤ん坊の姿だった――……
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