白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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「つまり、彼女はタイタス・スケイルに向けて“やりなおしの魔法”を放った、ということだな」
「人生そのものをやりなおさせるみたいです」
「……やることなすこと極端だなあ、怪盗アプリコット・ムーン」

 仮死状態の薬の効果が切れて覚醒した国王アイカラスが、苦笑を浮かべながら第一皇太子で国王名代の任を担っていた長男フェリックスの報告を聞いている。目覚めた際にフェリックスが戴冠し終えていることも想像していたが、どうやらアイカラスが起きるまで待っていてくれたようだ。
 ふたたび怪盗アプリコット・ムーンが暗躍し、想定外の事態に陥っていたものの、ウィルバーを含む王家の人間が一丸となってタイタスの悪巧みを阻止したと知って、国王陛下は安心している。

「まさかここにきて孫が増えるとはな……ライナス、いい名前だ」
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