白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 蜜を滴らせて甘い啼き声をあげるローザベルに、ウィルバーが耳殻を舐めながら愛を囁く。

「俺に魔法はつかえないけれど、君を愛することなら誰にも負けない。ローザは?」
「わ、わたしも十年前から……誰よりも、ウィルバーさまのことを想ってました」

 愛を受け取ってばかりだったローザベルはようやく本人に愛を返せたと、右足首のアンクレットを見せる。藍玉ももともとは緑柱石と同じ鉱石の仲間だから、ローザベルの瞳の色と相性が良いのだ。

「知ってました? 藍玉の石言葉は、“幸せな結婚”なんですって……わたし、結婚式でこのアンクレットをつけてくれって頼まれたとき、嬉しかったんですよ。結婚式でつけた指輪も大切に仕舞ってありますけど、あれはもともとご先祖様のものですからね」
「ローザをもう手放したくないから足枷にした、って言ったら怒る?」
「そんなことで怒りませんよ? ずっと捕まえていてくださいな」

 花の褥に組み敷かれた状態で、クスクス笑いながら応える愛妻が可愛くて、ウィルバーは当然だとキスで返す。
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