鬼は妻を狂おしく愛す
何度も果てて、ぐったりした美来をそのまま寝かせ部屋を出た雅空。

ドアの前に奥田が待機していた。

奥田の運転で妖子の元に向かう。
妖子は廃墟になった建物の中にいた。

「雅空様!申し訳ありません!!
奥様にも謝りますから!許して下さい!!」

「お前…女だからって甘く見てただろ…!?
俺は無能な人間は嫌いだ…
早く消えろ!!クズ!」
その言葉で、犬飼が拳銃を取り出しこめかみに銃口を向けた。
「ただ好きだっただけなんです!貴方の事が!雅空様!助けてくださ━━━━━」

パァァァーーーン!!!!

「呆気ないなぁ…」
雅空は汚ない物を見るように妖子を見て、
「後は頼む」
と言い、その場を後にした。

再びホテルに戻り、寝ている美来の横に腰かけた。
頭を撫でながら、語りかけるように話す。
「美来、ごめんね…
俺は美来を傷つけてばかりだ……
でもね、どうしても……離せないんだ。
美来が傍にいてくれないと、もう……生きていけない」

そこにいる雅空は、イカれた若頭でも、鬼でもなく、ただ一人の男だった。



【━━━━━━犬飼さん、いつもすみません】

「いいえ。これも仕事だと言ったではありませんか!」
【ありがとうございます】

いつものように、犬飼と買い物中の美来。

【ちょっとお手洗いに行ってきますね】
「はい、ここで待ってます」
タタタッと駆けていく美来の後ろ姿を優しく見つめる、犬飼。

「え━━━━━!?」
その美来の後ろを見慣れた男がつけていた。
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