鬼は妻を狂おしく愛す
鬼に囚われ続ける妻
用を済ませ、トイレを出る美来。
【謙吾くん?
………だよね?】
美来が疑問形なのは、あまりにも謙吾の様子がおかしいから。

「美来、一緒に来て」
【ごめんね、勝手には行けないの】
「じゃあ、無理矢理拐う」

━━━━━━!!!?

無理やり手を引っ張られる、美来。
助けを乞うにも、声が出せない。

そのまま引っ張られ、車に乗せられた。

謙吾の自宅に着き、今度は抱きかかえられて室内に入った。
乱暴にベットに寝かされ、組み敷かれた。

「美来、旦那と別れて俺と結婚して!」
美来は目を見開き、頭を横に振った。
「なんで!?」
【愛してるからだよ】

「アイツが、最低な人殺しでも?」
【そうだよ。私も、一緒に背負う覚悟はしてるよ】

「じぃちゃんが、殺された……」
謙吾の言葉に、美来は動きが止まった。

【もしかして…】
「そうだよ。俺の目の前で、お前の旦那の部下が殺った」
【どうして】
「俺がアイツを挑発したんだ。
美来を取られたことに嫉妬したから、つい……」

美来はさすがの事態に驚きが隠せない。
「罪、背負うっつんなら美来が俺のモノになってよ?」
謙吾の手が、美来の口唇に触れた。
そのままなぞる。
そして謙吾の顔が近づいてくる。

その時だった━━━━━━
ガン━!!ガン━!!ガン━!!
ガシャーーーーーン!!!
玄関が何かで殴られる音がして、雅空が現れた。
土足のまま上がり込み、部屋中を探す。

雅空は謙吾に組み敷かれた美来を見て、凄まじい怒りに包まれた。

そのままタタタタ…と駆けてきて、あっという間に美来から引き剥がし床に投げつけた。

「さぁ…美来を拐った代償……払ってもらう……!!!」
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