天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

よくよく考えればもう二十二時に近い。いくら同期と言えこんな時間に電話するなんて非常識だと気づき、電話を切ろうとしたところで久しぶりの声が聞こえた。

『もしもし? 若林? どうしたの?』

こんな時間の久しぶりの電話にも関わらず、明るく出てくれた同期に感謝しつつも、私は本題に入る。
「ごめんね。もう会社じゃないよね?」

『うん、何かあった?』
申し訳なさそうに言われた言葉に、私はあえて明るい声を心がける。
「うんん。ちょっと上司が捕まらなくて。今日そっちに行ったと思うから」

その私の言葉に、少しの無言が流れ、私の心臓がドクっと音を立てる。
『若林の上司って、監査の人? 今日は誰も来てないよ』
「え? 和泉部長が行ったと思ってたけど、勘違いだったのかな。ごめん」

なんとか冷静を装って言うも、電話で顔が見えなくてよかったと思った。私の顔面はきっと蒼白だろう。
『和泉部長? しばらく見てないけど相変わらずのイケメン? なんか急ぎの書類でもあったの?』

「そんなところ。ごめんね。遅くにありがとう」
それだけを言うと私はスマホの通話をオフする。
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