天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「それは……。説明すれば長くなるけど、これだけは言える。俺が好きなのは佐知だし、俺は婚姻届も本当は出したかった」
真摯に言われたそのセリフがなかなか心の中に浸透しない。でも龍一郎さんはふざけているようには全く見えない。
そこへ、龍一郎さんのスマホが音を立てる。ディスプレイを見れば監査課の部下からのようだった。
「邪魔しやがって」
そうは言っている龍一郎さんだが、当たり前だが今日は仕事のはずだ。
「どうやって抜けてきたんですか? 今日の仕事は?」
「全部放り投げてきた」
サラリと言葉にして私を見つめる瞳に、もはや驚きしかなかった。
あの仕事の鬼で、冷徹な人が仕事を放置してこんなところにいるなど考えられない。