天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「母のものなんだ」
私が口を開く前に、静かに初めて見るかもしれない懐かしそうな表情の龍一郎さんがそこにはいた。
「お母様?」
「ああ」
意外過ぎたその答えに、私はポカンとしてしまったのだろう。
その後、龍一郎さんはゆっくりと話を始めた。自分が愛人の息子であり、母は最期まで一人だったこと。アクセサリーなんてすることがなかったお母様だったが、この指輪だけはずっとしていたことを。
私はその話にポロポロと涙が零れる。そんな大切な指輪を勘違いし、確かめることもしないで勝手に傷ついて迷惑を掛けてしまった。
「ごめんなさい……」
呟いた私の肩をそっと龍一郎さんは抱き寄せる。