天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「今更どの面を下げてそんなことを言えるんだ」
初めて見るはっきりとした怒りを露わにした龍一郎さんに、私も涙が零れそうになる。
しかし、それを耐えて私もジッと前の斎藤氏を見据えた。
「母がどんな思いで過ごして、死んで行ったかあんたにはわからないだろ」
その言葉に、斎藤氏の瞳が見開かれたのが分かった。
「それに、俺はあんたの築いた財産にも会社にも全く興味がない。今まで俺にかかった金もすべて返す。これであんたも安心だろう。俺と完全に縁が切れて。話はそれだけだ。後は元永さんを通じで今後俺とは一切かかわらないとでも書いた書類でも作ってくれ」
それだけを言うと、龍一郎さんは息を切らして立ち上がった。
「佐知、行こう」
「あっ、え?」
語気を強めていた龍一郎さんの迫力に呆然としていた私だったが、慌てて龍一郎さんの後を追う。
「龍一郎、待て」
今まで黙って彼の罵倒を聞いていた斎藤氏が静かに声を発した。