天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「いいたいことはそれだけか?」
挑発するような物言いに、龍一郎さんが振り返り睨みつける。
「財産なんていらないって言ってるんだ。俺の自由だろう。あんたの駒になるつもりなんてない。優秀な息子も娘もいるだろう。そっちで勝手にやってくれ」
そうだ、斎藤氏には次を継ぐ息子2人もいるし、経営も順調のはずだ。龍一郎さんに固執する必要なんてないはずだ。
そのことに思い当たり、私は気持ちを落ち着かせると斎藤氏を見た。龍一郎さんに向ける視線は明らかに父親の物で、彼の中に何かを見つけようとするような眼差しは決して怒りや、龍一郎さんを非難するようなものに見えなかった。
「あの」
私はおずおずと斎藤氏に声を掛ければ、そこで初めて真っすぐに視線が交わる。もう一度きちんと斎藤氏の前に座り、手を付いて頭を下げる。その様子に龍一郎さんが驚いたように「佐知」と声を上げるのも気にせず口を開いた。