天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

「若林佐知と申します。龍一郎さんと結婚を約束しております」
それだけを一気に言うと、私は頭を上げた。

「ありがとうございます」
「え?」
斎藤氏の思いがけない返答に、私は気の抜けた返事をしてしまった。

「元永から逐一ずっと龍一郎の様子は聞いていました。そしてあなたと暮らし始めたということも」
静かに発せられる言葉を私はただ聞いていた。その口調はやはり優しくて、慈愛に満ちている気がした。

「佐知さんと言ったかな?」
「はい」
静かに返事をすれば、斎藤氏は初めて表情を緩めた。

「龍一郎は聞きたくないと思うから、代わりに私の昔話を聞いてくれますか?」
そんな斎藤氏のセリフに、龍一郎さんを仰ぎ見ればギュッと唇を噛んで何かを耐えるような表情をしていたが、私を止めることはしなかった。
それを確認し、私が頷けば斎藤氏は静かに語り始めた。
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