天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~


龍一郎さんのお母様である、晴香さんが亡くなる寸前まで、龍一郎さんの存在を知らなかったこと。
そして、龍一郎さんのお母様とは本当に愛し合っていたが、対立する家の都合で一緒になれなかったこと。

そしてその後すぐ、あの頃経営が危なかった会社を立て直すために、政略結婚で今の奥様と結婚したこと。

「龍一郎の事を知った時、もちろんすぐに会いに行きたい気持ちもあった。しかし、私には守るべき社員が何千人といて、家族もあった」

それはそうだろう。ずっと愛妻家として通ってきた人の隠し子騒動など、マスコミの格好のネタになる上に、これだけの大きな会社ならば少なからず株価などにも影響するはずだ。

「そして、何より晴香がそれを望まなかったからだ」
「なんだって?」
その言葉に初めて龍一郎さんが口を挟んだ。

「必ず晴香と別れたことを無駄にしない。私は三洋を守るという約束をした。龍一郎のことは公にはしないと」

「母さん……」
呟くように言った龍一郎さんは、今どんな感情なのだろう。ドサッとその場に座り、髪を掻きあげる。
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