天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

「これを」
それだけを言うと、胸ポケットから斎藤氏が一通の封筒をだして置いた。

「母さんの字」
呆然とそれを見ながらも、手にしない龍一郎さんに斎藤氏がそれを手にすると、龍一郎さんの前へと進みでた。

「最後、一度だけ晴香に会いに行った病床で預かった手紙だ」
「会った?」
驚いて聞き返した龍一郎さんに、斎藤氏は悲し気な中にも、慈しむような笑みを浮かべた。

「龍一郎を頼む手紙が来て、晴香の最後を知りどうしても会いたくて押しかけて怒られた」
それは本当に懐かしそうにお母様を思っているのが解る言葉使いだった。
龍一郎さんのお母様は愛情と、強さを兼ね備えた人だったのだろう。

「会社を守るために龍一郎には会わない。でも一度だけお前に愛する人ができたら、私の代わりにその人に会って欲しい。それが晴香の願いだった」
そういうと、そっとその封筒を龍一郎さんの手に握らせた。
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