天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

「こんな環境に産んでしまって、人を愛せない子になったのではと心配した私に、晴香は笑っていたよ。私があなたの分まで愛情を掛けたのよ。いつか絶対に誰かを見つけるから心配しないでって」
その言葉を聞いてとうとう、隆一郎さんの瞳から涙が零れ落ちた。

「バカだな……母さんは」
そんな彼の手を斎藤氏がギュッと手を握りしめる。

「晴香の約束を破ってでも、お前の事を公表してもいいと思ってる。お前は俺の息子だ」
その言葉に、龍一郎さんは静かに涙を拭った。

「いや、やめてくれ。そんなことをしても誰も幸せにならない」

「そうか……、やっぱり晴香の息子だな。佐知さん、なかなか結婚をしない龍一郎にいろいろ言ったり、試すことをして不快な思いをさせたと思う。申し訳なかった」
静かに斎藤氏はそう言うと、息を吐いた。そしてそこでずっと黙っていた元永さんに視線を向ける。

「お前の存在を知ってから、私が勇逸水面下でできることをしてきた。元永」
その言葉に、元永さんが出て行ってしばらくすると、上品そうな初老の夫婦を伴って部屋へと入って来るのがわかった。
< 179 / 191 >

この作品をシェア

pagetop