天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「あの、申し訳ありません。私まったく何も覚えてなくて」
呟くように言った私に、部長は何も言わない。
覚えていなくても、確実に私が迷惑を掛けたことは事実だろう。それほど強くないアルコールを飲んで記憶までなくしてしまった。
どうして会う可能性の高い会社の近くなど行ってしまったのだろう。後悔してももう遅い。
無言の時間が耐えられず、私はガバッと起き上がり正座をするとその場で土下座をする。
「ご迷惑をおかけしました。あの、何があったのでしょうか」
顔を下げたまま問いかけた私に、静かな声が降って来る。
「本当にそれ聞きたいのか?」
まさかあの冷徹上司からそんな言葉が聞こえるなど全く想像をしていなくて、聞き違えたのかと私は顔を上げた。
いつも的確にはっきりとした物言いしかきいたことがない。もちろん答えを聞くことは怖かったが、まさか、問いで返されるなど想像もしていなかった。