天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

「俺の顔に何か付いてる?」
「あっ、いえ」
見ていることに気づかれていた事実に、私は居たたまれなくなる。まさか龍一郎さんが素敵で見とれていたことなど知られなくない。

「きれいな庭ですね」
つい関係のないことを言った私に「ああ」とだけ龍一郎さんは答えた。

「じゃあ、一時間後ぐらいでいいか?」
男湯と女湯の前で別れ際に龍一郎さんに言われ、私も小さく頷く。
中へ入ればとてもおしゃれでモダンな造りで、お湯もとてもよかった。露天風呂も素敵で私はつい長風呂になってしまう。

のぼせたかな……。

少し入りすぎたと思い、私は湯から上がると初めに選んだ薄い紫に朱色の花があしらわれた浴衣に手を通す。
少し派手だったかなと恥ずかしい気もするが、とても柄が気にったのだ。
簡単にメイクを整え、外へ出ると龍一郎さんを探すも見当たらない。
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