ソーダ水に溺れる

「この時季って無性にアイス食べたくなんない?」

「んー、あたしは冬に食べるアイスのほうがすきかな」


冬の暖房をつけた部屋。コタツの中に潜りながら食べるアイスは格別だと思う。以前そのことを友人に伝えたときは、意味わかんないって顔をされたけど。


「んじゃあそのときはあおちゃんが誘ってね」

口許に弧を描く水瀬。

きっと、こういう台詞なんて息をするかのように吐いてるんだろうな。そう思ったら返事なんてできず、はは、という曖昧な声だけが零れた。


水瀬の頭の中はさっぱりわからない。
初対面のときからこのイメージは変わらないままだ。

初めて会話をしたときのことは衝撃的で今でも鮮明に覚えている。





大講義室。5月上旬のこと。

入学して1ヶ月も経てば新生活にも慣れてきて、友人とテキトーに後ろのほうの席に腰を下ろした。会話をしていれば程なくして授業が始まって、それからまだ20分も過ぎていないうちに隣に座る友人は早々と机に伏して寝ていた。


通りでさっきから静かだったわけだ、と納得して。たしか昨日夜通し映画を見たから眠い眠いって言ってたな、と今朝の会話をぼんやりと思い出す。


しかも今は三限。昼食を食べ終えたばかりの頭に、テキストの内容を事細かに説明するおじいちゃん先生の説明はもはや子守唄だ。
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