ソーダ水に溺れる

んー、と軽く伸びをして広い講義室を見渡せば、真面目に授業を受けている人のほうが少なくて大学ってこんなものか、と思う。


気を抜くと瞼が閉じる。隣でスースーと気持ちよさげに寝息を立てている彼女に、あたしまで夢の世界に引きずり込まれそうになる。でもノート見せなきゃいけないしなあ、と働かない頭でなんとか教授の声を拾おうとしていると。


『ねね、』

欠伸をひとつ零したとき、肩をポンポンと叩かれた。

予想もしていなかったそれに、びくり、と肩を震わせれば、『ごめん、驚かせた?』と再び声が届く。


振り向けば、後ろには二人の男子がいた。黒髪と茶髪。黒髪のほうは机に伏していて授業放棄。どうやら斜め後ろに座る茶髪のほうが話しかけてきたらしい。


『なん、ですか?』


その顔には見覚えがあった。でも決して、高校が同じだったとか話したことがあるとか、そんなんじゃない。ただ噂で耳にしたことがある、それだけだ。


『レモンソーダすき?』

『へっ?』


身を乗り出して小声でそう聞かれて唖然とする。

レモンソーダ?と首を傾げるあたしに、そうそう、と頷いたあと、隣の席に置かれていたリュックの中から一本のペットボトルを取り出す。
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