仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
ビオラの刺繍、涼やかな声、嬉々とした話し方、口元しか見えなくてもわかる無邪気な微笑み。
もう、確信してもいい。
『うん、愛くるしい可憐な花はユリシスによく似合う』
『えっ』
『ふふっ、照れてるのですか? かわいい方ですねユリシスは』
『うっ…』
こんなに甘い言葉が自分の口から出てくるのが不思議でならないが、恥ずかしがるユリシス、いや、フローラが愛おしくて仕方がない。
『この仮面舞踏会で、お前は、最愛の人を見つけるはずだ』
悔しいが、皇帝の言うとおりだった。
フローラが運命の相手かはわからない。
彼女が自分を愛してくれるなんて自惚れたことは言えない。
でもユーリスは今、自分にとって愛おしい最愛の人はフローラなのだとはっきりと自覚した。
苦しいくらいに胸は高鳴っているのに心は不思議と凪いでいた。
自覚した以上、次の行動が脳裏を駆け巡る。
明日、フローラを迎えに行く。
今日の態度を見てもフローラはきっと会ってくれるはず。
誠心誠意謝罪をして屋敷に戻ってきてもらうように説得する。
そのためにもまずは皇帝にフローラと会う許可をもらわないといけない。

(気づかせてくれたのは不本意ながら皇帝だ。これは文句ではなくお礼を言わないといけないのか?)
それはやだなと顔を歪めていると、舞踏会会場から二人の男女が出てきてこちらに向かってきていた。
女性に文字通り首根っこを掴まれて引きずられるように歩く金髪の男性は見たことのある宝石を散りばめた仮面を被っていた。
「いつまで羽目を外しているのですか!帰りますよ!」
「えー!マリー本番はこれからなのに〜」
「仮面をつけてたって鼻の下を伸ばしているのはわかっているのですよ!私という者がいながら許せません!」
「えー!鼻の下なんて伸ばしてないよ〜。愛してるのはマリーだけだよ?」
(はあーやっぱり)
ふたりのやり取りを見て誰だかわかってしまったユーリスは呆れてため息を吐く。
「おふたりとも、ここで騒いでは正体がばれてしまいますよ」
「おお!ユ、じゃない薔薇の君!」
「うっ……なぜその名を」
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