仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「やめろ、近づくな」
女は下着にも手をかけ、後ずさるユーリスに近づきながらブラを落とし、ショーツも脱ぎ全裸になって色気を醸しユーリスを誘惑する。
「あんた、その火傷がなきゃ結構イケてるのに可哀想ね。そのせいで女には縁がなかったんだろ?あたしが相手してやるから、ね?女を抱いてみたいだろ?」
迫りくる女の体は艶めかしく胸が豊満で女の裸体を見たことがなかったユーリスは一瞬呆気に取られた。そんな彼に妖艶に笑った女はユーリスにすり寄ると右手を掴み自分の胸に押し当てる。
その感触にユーリスはハッと我に返ると女を突き飛ばし足早にドアに向かい女が何か叫んでいたが無視して外に出た。
部屋の外は長い廊下で目に付いた階段を駆け降りフロントらしいホールを抜け外に出る。
「ここは、どこだ……」
頭痛に苛まされ額を押さえると、仮面をしていないことに気づいたがまたあの部屋には戻りたくない。とにかくここから逃げたいと壁伝いに歩き、細道を通り人気のない大通りを出てやっとここがどこだか気が付いた。
この大通りは宮殿へと繋がるメインストリート。
今は深夜のためか人通りは皆無でひっそりとしている。
その脇のユーリスが通ってきた裏道の奥には繁華街とホテルが立ち並んでいて、ユーリスがいたのはホテルだと推測される。
あの女は多分娼婦だ。
この帝国では売春行為は禁止されていて見つかれば重い刑罰が科せられるのだが、裏で斡旋しているブローカーがいるらしい。はじめにいた男は口ぶりからその元締めかもしれない。
売春撲滅のために度々帝国警察が立ち入り捜査などしているのだがイタチごっこで、皇帝も頭を悩ませていた。
なぜあんなところで眠っていたかわからないが、そんな娼婦とホテルでふたりきりで、もし目覚めなかったら今頃どうなっていたかと思うとユーリスは背中に悪寒が走り手が震えた。
手袋越しとはいえ女の胸に手が触れた。その感触が蘇り手袋を脱ぎ棄てると感触を忘れるために何度も強く握り擦り合わせる。
「どうして、こんなことに……」
青ざめ呟いた声は震えていた。
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