仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「どうしたユーリス!」
「夜分遅くに申し訳ありません、宰相殿」
深夜近い時間の来客にガウン姿スペンサー侯爵は驚き、ユーリスが仮面も付けずに右手で隠しながら立っているのにも驚いた。
疲れ果てたような声、憔悴しきった顔、手袋をしていない火傷痕の残る右手、痛々しい限りのその姿にスペンサー侯爵はただならぬ事態を察知し、ユーリスを私室に入れると人払いをした。
暗い顔で動揺しているユーリスを座らせスペンサー侯爵自らお茶を入れテーブルに置くと向かいの椅子に座った。
「飲みなさい、ブランデーも入れたから少しは落ち着くだろう」
「……すいません」
ユーリスは顔を隠していた右手を降ろし両手でカップを持つと一口お茶を飲む。
お茶の温かさとブランデーのアルコールが体に染み渡るようでほうっとため息を吐くと強張った顔が少し緩んだ。
近くにスペンサー侯爵の屋敷があってよかった。
ヒルト邸も宮殿ももっと先にあり歩けば一時間以上かかる。
スペンサー侯爵は数少ないユーリスの素顔を知る者で顔を隠す必要もなく人払いをしてくれたのはありがたかった。
侯爵がいてくれなかったらユーリスは今頃途方にくれていたことだろう。
冷えた体に熱が戻るようでユーリスはゆっくりとお茶を飲み干した。
それを見ていたスペンサー侯爵は、いつも冷静沈着なユーリスがこんなに憔悴しているのを見たことがなく事態の深刻さを感じた。
「夜分遅くに申し訳ありません、宰相殿」
深夜近い時間の来客にガウン姿スペンサー侯爵は驚き、ユーリスが仮面も付けずに右手で隠しながら立っているのにも驚いた。
疲れ果てたような声、憔悴しきった顔、手袋をしていない火傷痕の残る右手、痛々しい限りのその姿にスペンサー侯爵はただならぬ事態を察知し、ユーリスを私室に入れると人払いをした。
暗い顔で動揺しているユーリスを座らせスペンサー侯爵自らお茶を入れテーブルに置くと向かいの椅子に座った。
「飲みなさい、ブランデーも入れたから少しは落ち着くだろう」
「……すいません」
ユーリスは顔を隠していた右手を降ろし両手でカップを持つと一口お茶を飲む。
お茶の温かさとブランデーのアルコールが体に染み渡るようでほうっとため息を吐くと強張った顔が少し緩んだ。
近くにスペンサー侯爵の屋敷があってよかった。
ヒルト邸も宮殿ももっと先にあり歩けば一時間以上かかる。
スペンサー侯爵は数少ないユーリスの素顔を知る者で顔を隠す必要もなく人払いをしてくれたのはありがたかった。
侯爵がいてくれなかったらユーリスは今頃途方にくれていたことだろう。
冷えた体に熱が戻るようでユーリスはゆっくりとお茶を飲み干した。
それを見ていたスペンサー侯爵は、いつも冷静沈着なユーリスがこんなに憔悴しているのを見たことがなく事態の深刻さを感じた。