仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「ユーリスなにがあった?」
「……油断しました。嵌められたようです」
まだ頭痛のする頭を押さえ苦い顔をしてユーリスは事情聴取を終えてからの一連の出来事をスペンサー侯爵に説明した。
「陛下が馬車やワインを用意するなど、気の利いたことをするはずがありませんでした。素直に受け入れ感謝した自分が腹立たしい」
チッと思わず舌打ちして手で顔を覆うユーリスに、毒舌は健在だなとスペンサー侯爵はなぜか笑えてくくっと声が漏れた。
「侯爵?」
「あ、いや、災難だったな。しかし、寸でのところで逃げてこれたのは不幸中の幸いだった。後は陛下が動いてくれるはずだ」
「陛下が?」
こんなこともあろうかと皇帝は危惧していたのだ。早急ではあったが対策は万全のはず。
いざとなればスペンサー侯爵も一肌脱ぐつもりでいる。
しっかりしているようでまだまだ経験の浅いユーリスを守り導くのは年寄りの役目だと思っている。
何人たりとも彼の幸せな人生を壊させるわけにはいかない。
「お前は何も心配することはないぞ」
不安そうな顔をするユーリスを勇気づけるように笑顔を見せたスペンサー侯爵は亡くなったユーリスの両親に代わって必ず守ってみせると心に誓った。
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