仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
皇帝のニヤニヤした顔にこれ以上余計なことを喋られても困るため観念してユーリスは大人しく帰ることにした。
フローラと共に屋敷に帰るとき、心配したアーゲイド男爵が待ち構えていて一緒についてきた。
馬車の中では三人とも終始無言で、フローラとふたりきりになるのは正直避けたかったユーリスはこっそり助かったと思いつつすっかり頭痛の消えた額をしきりに押さえていた。
そんな姿を見ていたフローラは頭痛でもしているのかと心配だったが声を掛けられずにいた。
ヒルト邸に戻るといつも通りベリル執事が出迎えて、居間に男爵を通すとユーリスは着替えるために私室に向かった。
包帯を取り顔を洗うと、少し気が晴れる。
「ユーリスさま、こちらを」
「ああ、ありがとう」
予備の仮面をベリルは何も言わずに用意してくれた。
仮面は証拠品として押収されているため手元に戻っては来なかった。
しかしユーリスの顔に合わせ作られた特注の仮面は割れたり無くしたとき用に予備があり、それを付け居間に戻るとドアが少し空いていて声が漏れ聞こえていた。

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