仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「私と、ユーリスさまと、この子の」
そう言ってフローラは自分のおなかを愛おし気に撫でた。
「ふ、フローラ? まさか……」
幸せそうに微笑み頷くフローラにユーリスは驚き感極まって唇がわなないた。
「ああ……どうしたことか、こんなに幸せばかりが続いて怖い」
愛する人ができ自分を恐れることなく受け入れてもらえ愛される喜びを知り、結婚まで出来て幸せの絶頂だというのに子供まで授かるなんて、一気に幸せが押し寄せてきて幸せ慣れしていないユーリスは、もうこれからは堕ちていくだけなのではと思わずにはいられない。
眉根を寄せるユーリスの頬をフローラは安心させるように優しく撫でた。
「怖がらないで。ユーリスさまはこれからもっともっと幸せになるのですから」
「……ありがとうフローラ。感動で胸がはちきれそうだよ」
感無量でぎこちなく笑うユーリスはフローラを抱きしめキスをするとお腹に手を当てた。
「私たちの子がここに……」
「ええ、この子もたくさん愛して幸せにしてあげましょうね」
「ああ、もちろん愛して幸せにする。君もこの子も私の大切な宝だ」
決意新たに誓ったユーリスの手が何度も優しくお腹を撫でてくれる。
その手に自分の手を重ねたフローラは、まだ平らなお腹の中にふたりの愛の結晶がいるのだと思うと愛しくて喜びに満ち溢れた。

きっと子が生まれたらユーリスの描いた三人の仲睦ましい絵が家に飾られることだろう。
そして家族が増えるたびに幸せな絵が増えていくのだ。

明るい未来を思い浮かべたふたりは抱きしめ合いお互い温かさを感じて幸せを噛み締めたのだった。

FIN

< 198 / 202 >

この作品をシェア

pagetop