仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「絵は誕生日までには完成するから、もう少し待っていてほしい」
「ええ、楽しみに待っています」
ユーリスに肩を抱かれ、感無量で自分が描かれた絵を見つめていたフローラはそっとおなかに手を当てユーリスを見上げた。
「ユーリスさま、絵を描くのはお辛いですか? もう一枚描けないでしょうか」
「ん? いや。少し不自由だが昔の感覚も蘇ってきたし、また趣味程度なら描いてもいいかと思っていたが、何か書いてほしい題材でもあるのか?」
珍しくおねだりをするフローラにユーリスは優しく微笑む。
「ええ、家族の絵を」
「家族?」
フローラとユーリスふたりの? それともフローラと父のアーゲイド男爵のことだろうか?
皇帝一家、ということはあるまい?
ユーリスは首を捻る。
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