仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「それはよかった」
「男爵はお変わりないですか?宮殿で過ごして困ったことがあればお伝えください」
「困り事など何も、皇帝陛下にはとてもよくしてもらってます。有意義な時間を過ごさせていただいてますよ」
はっはっと笑った男爵は、皇帝と酒を交わしたり皇妃とお茶をしたりふたりのお子さまと遊んだりと上げ連ねる。どうやら皇帝家族と親密に交流しているようだ。
実は皇帝には七歳になる皇太子と五歳になる皇女ふたりのお子さまがいる。
やんちゃな子供たちの世話までさせてるのかと、人使いの荒い皇帝を思い浮かべてユーリスは渋い顔をした。
「いやいや、かわいい盛りのお子さま方と仲良くできてうれしいですよ。皇妃さまはお美しいですし」
にひひと鼻の下を伸ばす男爵にユーリスは苦笑い。
「そうですか」
「それより、ヒルト伯爵はその、フローラのことはどう思っておられるのでしょうか」
「どう、とは?」
急に神妙な顔になりうかがうように聞いてきた男爵にユーリスは首を傾げる。
「フローラが婚約者でご不満がおありであればお暇も考えなくてはと思いまして」
暗に娘を帰してくれと言われてるような気がした。やはり男爵はユーリスの許にフローラを嫁がすのは心配なのだろう。フローラはもう少し傍に置いてほしいと言ったが男爵が娘を帰してほしいというのなら帰すしかない。
「それは、まだ、お互いを知るには時間が必要だと思います。ですが、男爵殿がご心配であれば婚約は解消することも……」
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