仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
いくらフローラでも、ユーリスのプライベートに踏み込むのは無理なんじゃないだろうか。
そう思ってみたものの、期待を込めた目がこちらをじっと見つめる。
「いきなりフローラさまが起こしに行けばユーリスさまは驚かれるでしょう」
「ふふっ、だからよ。ユーリスさまをびっくりさせたいの」
いたずらっ子のように笑うフローラ。
今までの婚約者たちと違いフローラはユーリスとかなり打ち解けてきてるとベリルは思う。
あの冷淡なユーリスがフローラだけは優しい眼差しを向けるのだ。これはかなりの進歩だ。
フローラこそがユーリスの最良の伴侶だと屋敷の者たち全員が思っている。
いつもならもう起きて支度も済ませているはずだし、なかなか心を開けないユーリスにはショック療法も必要だろう。
ベリルはそう考えてフローラの提案を承諾した。
「そうですね、ユーリスさまをびっくりさせてしまいましょう。どうぞよろしくお願いしますフローラさま」
「ありがとう!では行ってきますね」
彼女のイタズラにユーリスが笑ってくれたら何かいいことが起こるかもしれない。
ベリルはそう思ってフローラを見送り自分の仕事に戻った。


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