地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 あたしは離れていく久保くんの手を両手で掴み、持っているスプーンの先をパクリと口に入れた。

「っんな!?」


 お、美味しい!

 プリンは市販のものだけど、生クリームの甘さもほど良くてプリンの甘さを優しく包んでいる。

 この組み合わせは最強!


 さっきまで感じていた腹立たしさや不満なんて吹き飛んでしまった。

 我ながら単純だと思うけれど、美味しさは正義なんだから仕方ないよね。


「……お前なんか可愛いな」

「ん?」

「犬みてぇ。餌付けしてる気分だわ」

 ムカッ


 ペット扱いされたことに腹が立ったあたしは、隙をついて久保くんからプリンを取り返した。

「え? は?」

 素早く取り返されて驚く久保くん。


「人をペット扱いする人に餌付けなんかされません!」

 そう宣言して椅子に座りなおしたあたしは、もう振り回されないために食事に集中する。


 さっさと堪能して教室戻ろう。


 その決意通り、あたしは残りの料理を美味しく頂いてから「お先に失礼します」と断りをいれて席を立った。


 トレイを片付けるために持ち上げると、すかさずウェイトレスの人が来て「私たちがやりますので」と少し慌てたように言われてしまう。

 申し訳ない気分もあったけれど、ここであたしが片付けるのも悪目立ちすると思って引き下がった。
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