地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「ほら、しのぶも準備しないと先生来ちゃうよ?」

 笑っている理由は教えず、あたしはそう促す。
 しのぶは不満そうに唇を尖らせながらも前を向いて準備を始めた。

 そんな楽しいやり取りをした直後、教室の中の雰囲気がガラリと変わる。

 突然シン……と静かになって、続けてザワリとヒソヒソ声が聞こえてくる。


「珍しい。久保が来るなんて……」
「出席日数稼ぐために来る時って、大体朝から昼まで来てずっと寝てるだけだよな? こんな昼から来たことってあったっけ?」


 ……久保?

 何か聞いたことあるような名前……。


 そう思っていると、隣に威圧的な影が現れる。

 見ると、金髪の背の高い男があたしを見下ろしていた。


 明らかに不良と分かる見た目。
 気怠げな目なのに、射殺そうとでもしている様にも見える鋭い目元。

 知らず、あたしは生唾を飲み込んだ。


 彼――久保くんは、しばらくあたしをジッと見た後ポツリと呟いた。

「……地味な女……」

 そしてあとは興味を失ったように自分の席に座ると机に突っ伏す。

 様子を伺っていたけど、彼はそのままピクリとも動かなくなった。
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