地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「美来……?」

 不思議そうにあたしに視線を戻す久保くん。
 見ると、その目には戸惑いも見て取れる。

 惹かれている久保くんがいなくなってしまいそうで怖かったんだって、伝わっていないみたい。

 あたしと久保くんは両想いだってことはきっと久保くんも分かってる。

 あたしが告白の仕切り直しを待ってると言ったときの久保くんの反応を思えば、気付いているだろうって分かるから……。


 でも、あたしがどれくらい久保くんのことを思っているのかってところはちゃんと分かっていないのかもしれない。

 あたしの心の大部分は、もう久保くんで占められているっていうのに。


「……腕のケガ、もう大丈夫?」

 少しでも伝わって欲しいなって思って聞いてみる。

 でも久保くんは深い意味には取らなかったのか、目を瞬かせてから笑みを浮かべた。

「え? ああ、痕はまだ残ってるけど傷は完全に塞がったよ」

 伝わらないことを少しもどかしく思ったけれど、まあいいかと小さく息を吐く。

 今はこんなにすぐ近くにいるんだもん。

 側にいられる。
 側にいてくれる。

 最近中々話も出来なかったせいもあって、それだけでも嬉しかったから……。
< 689 / 878 >

この作品をシェア

pagetop