地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 だからただ、ケガが治って良かったと口にする。


「そっか、良かった……」

「……美来」

 小さく微笑んだあたしを久保くんは静かに呼ぶ。

 ん? と返すと、彼の腕に触れていた手に硬い手が触れた。

 ギュッと握られて、心臓が跳ねると同時に息を呑む。


「っ!」

 でも、息を呑んだのは久保くんも一緒だった。

 顔を真っ赤にして、握った手が少し緩む。


 自分で握って来たっていうのに、恥ずかしくなっちゃったのかな?


 でも、久保くんの硬くて大きな手は緩んだだけで離れてはいかない。

「美来……」

 もう一度呼ばれて彼の顔を見ると、頬を赤く染めつつも真剣な目をしていた。


 これって……。


 期待と緊張で胸が膨らむ。

 少し熱を持ったかのように潤む久保くんの瞳に、あたしが映っているのが見えてドキドキする。


「俺、はじめの頃は結構嫌なやつだったと思う。自分でもクズだなぁって思ってたし……。でも美来を知って、変わった。……その、全部が良い方にってわけじゃねぇとは思うけどよ……」

「……うん」

 続く言葉を――待っていた言葉を聞きたくて、あたしは促すように相槌を打った。
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