望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~

定時で上がれば、外はどんよりと雲が覆っていて私は小さくため息が零れ落ちた。
なんとなく気持ちが落ち込んだ日ぐらい、天気がいい方がいいに決まっているが、そう思うようにはいかない。

梅雨時期のこの湿度の多い時期はただでさえ髪もぺったりとするし、気分も落ち込みやすい。
今日は早く帰って、一人でゆっくりしたい。
そう思いながら足を踏み出せば、目の前の車から男性が降りてくるのが見えた。

「千堂さん……」
ダークブランの髪をラフにセットしたその姿は、いかにも最前線で働く、IT社長といった雰囲気だ。

大人の魅力全開のその人はニコリと笑みを浮かべた。

「もう終わるころだと思って。俺も今日は早く終わったから」

「そうなんですね」
借りてきた猫のように、少し緊張して答えればクスリと笑われてしまった。

マッチングアプリで知り合って、会うのはまだ数回だ。いきなり約束もなく現れたその人にも、私は何も言えずにいた。
< 48 / 143 >

この作品をシェア

pagetop