望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~
「ねえ、柚葉さん、この間食べたのはフレンチ?」
「え?」
その問いの意味が解らずにいると、望月君は迷うことなくエレベータへと歩いて行く。
「イタリアンじゃなくフレンチって言ってたよな……」
一人で思い出すように呟きながら、扉の開いたエレベータに私を促す。
「それ、私が話をしたの?」
そんなことを言った記憶はなかったが、言わなければ知っているわけもない。
「言ってましたよ。きっと美味しかったと思うけど、味がわからなかったって」
ああ、そうだ。緊張とお酒でほとんど味は解らなかった。
「そうだけど……。だから来たの?」
伺うように聞けば、望月君は私を見下ろす。その瞳は何を考えているかわからない。
「だって、このフレンチ美味しいですよ。もったいない」
ただそれだけの理由というに驚いてしまうも、その気遣いに私はクスリと笑い声をあげた。
「俺だったら緊張しないし、なんでも言えますよね?」
確かに同じ場所でも、望月君がいれば安心が出来るしなんでも言える。
「そうだね。今日は奢るから好きなもの食べよう」
元々私は食べることが大好きだ。最近色々あってそのことを忘れていた。