望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~

これだけのふれあいにドキッとしてしまう自分が、訳が分からない。

そのまま店をでようとする彼に、私は慌てて声をかける。
「ねえ、支払いは? 今日は私のお詫びのはずでしょ?」
矢継ぎ早に言った私をちらりと見て、望月君は言葉を発した。

「本気ですか?」
「え?」
私がきょとんとしていたのだろう、彼はかなり大きなため息をついた。

「俺、こんな場所に誘って、相手に支払わせるような男に見えますか?」
なぜか少し怒っているような雰囲気に、私は言葉を濁す。

「でも……。お詫びしてって」

「そうでも言わなきゃ、柚葉さん来ないでしょ?」
核心を突いた質問に、私はうっと黙り込む。確かにストレートに誘われていたら、多分断っていた。
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