誘惑の延長線上、君を囲う。
日下部君はどんな想いで二人を見ているのだろうか?私だったら、きっと耐えられない。ましてや、兄弟で同じ人を好きになって、その好きな人が手に入らないくせに身近な人として傍に居るなんて……。何ていうか、拷問に近い。

私はPCでお盆期間中の各店舗の売上高や客単価を見ながら、日下部君の事を考えてはマウスをクリックする手を止めて、またPCの画面を目で追って……を繰り返していた。

午前中、日下部君は戻らなかった。お昼休憩の時に社員食堂ですれ違った。その時に小さな声で私に耳打ちして、午後は外出して、そのまま退勤するらしいと聞かされる。その後、私は一日の作業を終えて、日下部君の連絡がないままに帰路に着く。

日下部君からの連絡も無かったし、一体、何時に帰って来るんだろう?どこに外出したのだろう?

夕飯の材料を購入し、マンションに着くと日下部君の部屋の玄関先に見知らぬ男子学生が座り込んでいた。

どうしよう?エレベーターから降りた私は、呆然としてしまう。

「お姉さん、誰?」

私がスーパーの買い物袋を持ち、立ち尽くしていた事に気付いた男子学生が私に声をかけてきた。

「え、えっと……」

どぎまぎしてしまう。校章入りの白い半袖シャツとチェックのパンツの制服に身を包みこんでいる、この子の顔を見ると誰かに似ている。
< 107 / 180 >

この作品をシェア

pagetop