誘惑の延長線上、君を囲う。
「もしかして、お兄の彼女?」

「……ま、まぁ、そんなとこです」

彼女ではないが、そう言って、この場を過ごせるならと思い、否定はしなかった。この男の子が似ている誰かは日下部君。高校生の時の日下部君の面影がある。きっと、この子は日下部君の弟だ。

「ふぅん……。まぁ、なかなか良いじゃん」

男子学生は立ち上がり、私を上から下まで品定めするように確認して、ふっと口角を上げて笑った。なかなか良いじゃん、って、どう受け止めたら良いのやら。私は苦笑いを浮かべる。

「もしかすると、日下部君の弟?」

「そうだよ。お兄には電話で断られてるから、ここに直接来れば、お兄に会えると思って来ちゃったんだ。……今晩、一晩泊めてくれる?」

「私は構わないけど……。とりあえず、中に入ろうか?」

玄関のセキュリティロックを解除して、弟君も家の中に入れる。会社でも初めて義理の弟君に会ったし、日下部君の弟君達に一日で両方会えてなんて、凄い偶然だ。

「御飯作っちゃうから、待っててね。ところで、お名前は?」

「日下部 陽翔(くさかべ はると)だよ。お姉さんは?」

「佐藤 琴葉だよ。日下部君とは高校の同級生なの」

「ふぅん……」

部屋の中に入れてあげると、自己紹介をした後は、素っ気のない返事をする陽翔君。入るなり、くつろぎ出して、ソファーに横になりながら、ゲームをしているようだ。
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