誘惑の延長線上、君を囲う。
「暑い?寒い?」

帰って来たと同時に冷房のスイッチを入れた。何時に帰れるかも、毎日まちまちなのでタイマーもかけておけない。新しい空調設備なので、部屋は瞬く間に涼しくなる。陽翔君に問いかけたが、返事はない。ゲームに夢中だから、聞こえないのかな?

「飲み物を置いておくね。アイスカフェオレ飲めるかな?」

くつろいでいる陽翔君の元にアイスカフェオレを差し出す。陽翔君はコクン、と頷いただけでお礼も言わずにストローに口をつける。スティックの粉を牛乳で溶かすだけのアイスカフェオレだから、それなりの甘みはある。喉が乾いていたのか、ゴクゴクと八割形、一気に飲んでしまった。

高校生の日下部君に似ているけれど、性格は違うようだ。あの時の硬派な日下部君ならば、『ありがとうございます』と微笑み返したのだろうな……。先程といい、二回も無視をされてしまった。私はやるせない気持ちも芽生えたが、陽翔君はきっと思春期だし、知らない女性なんかと話をしたくもないよね?……と思う事にした。

そんな事を考えながら、夕飯の支度をする。日下部君と二人分の材料しかないから、明日使おうとしていた食材も今日に回さなきゃ。陽翔君は男子高校生だから、やっぱり肉が良いのかな?鳥のもも肉があるから、唐揚げも作ろうか?
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