誘惑の延長線上、君を囲う。
「……分かった。俺よりも、告白された奴を選ぶならそれでも構わない。但し、俺にも会わせろ。俺が駄目だと判断したら、即、琴葉を連れて帰る」

いつもよりも沈んだ様な暗めの低い声で、日下部君は私に向かって言い放った。

「な、何なの?それ?」

「俺は本気で琴葉に嫁に来て欲しいとずっと考えていた。だけど、今更、そんな奴が現れるなんて思いもしなかった。琴葉が本気でそっちの男を選ぶと言うなら止めないが、俺が原因ならば精一杯努力して離さないつもりだ。……これは、昨日、夜中に考えた事」

「な、何、勝手な事を……!」

「だから、とにかく男に会わせて欲しい。琴葉を守れなさそうなら認めないからな!」

勝手な日下部君に腹が立つ!伊能さんは誠実で優しい人なんだってば!日下部君みたいに『好き』と言ってくれない人じゃない。真っ直ぐに気持ちも伝えてくれるし、回りくどくもない。私はストレートに気持ちを伝えてくれて、愛してくれる人が良いの。

日下部君が好きかどうかも分からなくて、秋葉さんの穴埋めかもしれない私なんて、もう疲れたの。

「バッカじゃないの!人の気持ちも知らないで!勝手な事ばかり言わないでよね!く、クリスマスは伊能さんと過ごすから!」

バンッ!赤信号で止まった時に車から降りた。丁度良く、タクシーが空車だったので飛び乗る。

あーぁ、情緒不安定。日下部君に初めて酷い言葉を浴びせてしまったかも?でも、仕方ないよね。泣いてばかりは居られないから、今までの鬱憤晴らしてやる!
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