誘惑の延長線上、君を囲う。
「やっぱり駄目、ですか?」

「駄目じゃないんですけど……、私的な事情がありまして……」

「同居人の方の件ですか?」

「え?まぁ、そんなとこなんですが……」

どうして同居人にこだわるのだろう。やはり、同居人が気になっているんだな。彼氏だと思われてるんだろうなぁ……。

「今日、会ったのも運命だと思うんで……、今、渡しますね。実はクリスマスの返事を貰ってないのに勝手に浮かれてしまい、プレゼントを選んでしまいました!も、もしも……付き合って頂けるなら、コレをつけてクリスマスに待ち合わせ場所に来て下さい!店員さんに選んで貰ったので、きっと気に入って貰えると思ってますが……気に入らなかったらごめんなさい!そして、返事がNOな場合は待ち合わせ場所に来なくて大丈夫です。待ち合わせ時間から30分待っても来ない場合は諦めますから……!」

真っ赤になりながら、しどろもどろに話す伊能さんが可愛い。童顔な顔が更に童顔に見える。伊能さんに小さな紙袋を差し出されたが、私は手を伸ばせなかった。真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる人って良いなぁ。伊能さんを好きになれたら、どんなに幸せだったのかな?

「さ、佐藤さん……?そんなに俺からの誘いが嫌だった?」

「ち、違っ。そうじゃない、んです……」

立ち止まっている私達は、隅に居るにもかかわらずにすれ違う人にジロジロ見られる。それもそのはず、私がボロボロと泣き出してしまったから。

日下部君が伊能さんだったら良かったのに。良い大人なくせして、青春時代の恋愛から抜け出せない。

苦しくて切ない。
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